イースター島の旅行記

はじめに
タハイの夕日

イースター島は実は数年前まであまり行きたいと思っていなかった。チリのサンチアゴから飛行機で片道五時間かかり、モアイを見るだけにしてはあまりにも遠いと思っていた。インスタグラムで見た一枚の写真がその考えを一変させた。15体のモアイがあるアフ・トンガリキを遠景から撮ったもので、周囲の山と海に溶け込んでいる。この景色を見に行きたいと思わせるのに十分な一枚だった。

イースター島はチリの首都サンチアゴから3700kmも離れたところにある南大平洋の島。東西で25kmほどの小さな島。現地語でRapa Nui、スペイン語でIsla de Pasquaと呼ばれる。

10世紀にモアイが造られるようにり、その後17世紀まで造り続けられていた。時代が進むにつれてモアイの形は変化して、後期には顔が大きいモアイが作られるようになった。18世紀になると突如として造られなくなり、部族間の抗争で倒壊されていくこととなった。1840年には最後のモアイが倒されたらしい。モアイを作ることが過度の経済負担になり、部族間抗争につながったという。

イースター島の地図

元々は多くのモアイに眼が入っていたらしい。モアイの眼には力が宿るとされおり、倒される時には顔を下向きにされ、眼も破壊されたらしい。モアイの力が及ばないようにするためだったとか。

現在、島には建造中に放置されたものも含め約900体ものモアイがある。アフと呼ばれる台座に立っているモアイは30体ほどで、すべて1900年以降に復元されたものである。

ハンガロアはイースター島の唯一の村で島の西岸に位置する。ホテル、レストランなど全てがここに集まっている。そして見どころの多くは島の東岸から南岸にかけてある。公共の交通機関はないので観光はツアーで回るか車やバイクを借りることになる。

南東部
アフ・トンガリキ (Ahu Tongariki)
アフ・トンガリキ、朝日

アフ・トンガリキは15体ものモアイが100mにもおよぶイースター島最大のアフ(祭壇)に並んでいて壮観。イースター島の最大の見所といえる。モアイは最大のもので9mの高さで、頭に載っているプカオや祭壇の高さを合わせると14mにも及ぶ。1960年の津波で倒れたモアイを日本のタダノというクレーン会社の協力によって復元させた。本来はすべてのモアイにプカオが載っていたらしい。復元が出来なかったプカオは敷地内に展示されている。

敷地内の入り口近くにはTravelling Moaiと呼ばれるモアイがある。1982年に日本に貸し出されたことがあってその名前がついた。

ここには時間を変えて3回来た。一番印象的だったのは朝、逆光の朝日に浮かび上がるモアイたちはまさに絶景としか言いようがない。順光になる午後も素晴らしい。

ラノ・ララク (Rano Raraku)

島の南東部にある小高い山で、この山の火山岩を使ってモアイが作られたことからモアイの工場とも言える場所。ここには製作中で石の中から切り出される前のモアイや運び出す途中だったであろうモアイが数百体もある。切り出し途中の22mもある最大のものやここにしかない座っているモアイなどが見どころ。

ラノ・ララクの東端にある座っているモアイからは、遠くに見アフ・トンガリキが見える。イースター島に来たいと私に思わせた風景が広がっている。自分は思ったような写真は撮れなかったけれど、、

ラノ・ララクからはCamino de los Moaisと呼ばれる道がいくつかある。モアイを運ぶ時に使った道で、運搬途中に置き去られたモアイが道沿いに多数点在している。海岸近くに伸びる道ではトレッキングもできる。

ハンガロア周辺
タハイ(Tahai)

タハイはハンガロアの町の中心から北に歩いて15分ぐらいのところにあり、夕日スポットとしても有名。夕方の時間にはたくさんの観光客が集まる。

ここには作られた時期が違うアフが3つある。アフ・バイ・ウリは5体のモアイが立っているが、最も初期のものでモアイの風化も激しい。その横にアフ・タハイ。一番北端のアフ・コテリクは最も後期のモアイ。プカオが載っており、サンゴでできた眼が入っいるので他のモアイとはだいぶ印象が違う。眼が入ったモアイは島で唯一。このモアイの眼は後に復元されたものだが、博物館ではアナケナで見つかった本物を見ることができる。

ラノ・カウとオロンゴ儀式村(Rano Kau and Orongo)
ラノ・カウ

火山クレーターであるラノ・カウには車でも行けるが、私達は歩いて行った。途中車道から外れトレッキングルートに入る。森を抜けるとクレーターの縁の展望台までは急な斜面を250mほど登る。クレーターは半径1500mほどで、クレーター底までは約200mもある。中には一部水が溜まっていて空が美しく反射している。

クレーターの縁を1kmほど南下するとそこはオロンゴ儀式村だ。オロンゴとは鳥人儀式が行われていたところ。250mの断崖を海側に駆け下り、2kmほど沖合の島に泳いで渡り、渡り鳥の卵を早く取って戻ることを部族間で競っていたという。勝った部族がその年一年間島を支配するという決まりだったそうだ。

アフ・リアタ

ハンガロアの南側にあるハンガ・ピコという港のすぐ近くに一体のモアイがある。ガイドブックにものっていないような小さなモアイだが、空港の滑走路の延長線上にある唯一の立っているモアイ。運が良ければ飛び立つ飛行機とモアイの写真が撮れるかも。

北東部
アフ・ナウナウとアナケナ海岸 (Ahu Nau Nau and Anakena Beach)
アフ・ナウナウとアナケナ海岸

アナケナ海岸はイースター島に渡ってきたポリネシア人が初めて上陸したところらしい。白い砂浜があり島の人達の憩いの場になっている。

海岸のすぐ近くにあるのがアフ・ナウナウで、7体のモアイが並ぶ。そのうち4体にはプカオも載っている。ここのモアイは倒されている間、砂に埋もれていたため風化から免れ状態がいい。顔の輪郭や体の模様もはっきり残っている。唯一残るモアイの眼もここから発見され、現在は博物館に収蔵されている。

このあたりは椰子の木が多く、椰子の木とモアイのペアリングがいい感じ。

アフ・テ・ピト・クラ (Ahu Te Pito Kura)

アナケナ海岸から2kmほど南にアフ・テ・ピト・クラがある。現在は倒れたままだが、立っていたモアイとしては最大で10mの高さがある。プカオだけでも2mの大きさだ。地球のへそと呼ばれる磁気を帯びた丸い石もある。

パパ・ヴァカ (Papa Vaka)

アフ・テ・ピト・クラからさら南にあり、平らな岩に絵が彫ってある。カヌー、魚、サメ、カメ、タコなど。ちなみにカメはホヌというらしいけれど、ハワイ語と同じだ。

南海岸
ヴィナプ (Vinapu)
ヴィナプ

アフ・タヒラとアフ・ヴィナプの2つのアフがある。アフ・タヒラは6体の倒されたモアイと数個のプカオがある。このアフの祭壇の石組みが精密に合わさったいて、インカの影響があるのではとも言われている。ここには珍しい女性のモアイもある。高さは2mほどの高さと小さく、プカオと同じ赤い岩でできている。女性のモアイはこの他には博物館にも一体ある。

ヴァイフ (Vaihu)

8体のモアイが横並びにうつ伏せになっていて、近くにはいくつかのプカオも転がっている。海岸線ギリギリまで転がっているプカオもある。二百年も前に倒された時の様子が思い浮かべられる。

アカハンガ (Akahanga)

ここには3つのアフがあり、すべてのモアイが倒されたままになっている。いくつかのモアイは仰向けになっているが、後になって動かされたらしい。ここには昔の住居跡も残っている。

内陸部
アフ・アキビ (Ahu Akivi)

ほとんどのアフが海岸線沿いにあるが、このアフは内陸にある。7体のモアイは復元され、海を向いて立っている。真西を向いており、天文学的な意味があるのではとされている。

プナ・パウ (Puna Pau)

モアイの頭に載っていた赤いプカオを切り出す石切り場で、いくつものプカオが無造作に転がっている。ちなみにプカオは帽子ではなく髪を頭の上で結った髷(まげ)であるとの説が有力らしい。

アナ・テ・パフ洞窟 (Ana Te Pahu)

イースター島には地下の溶岩流によってできた洞窟が多くある。アナ・テ・パフはその中で最も長く、入り組んだ洞窟は全長7km以上もあるらしい。洞窟は水源になり、防風にもなるので人々の生活に密着していた。洞窟への入り口の近くにはバナナなどの植物が生えている。

実はこの洞窟は全くの偶然で行くことになったのだ。アフ・アキビからの帰り道に何台かのの車が止まって観光客が降りていた。入り口で洞窟だよ、と言われて前を歩く観光客たちについて行くことにした。駐車場の近くに洞窟があり入口を見て終わりかと思っていたのだが、いつまで歩いても洞窟にたどり着かない。20分ほどしてやっと洞窟に着いたと思ったら、今度は洞窟の中にどんどん入っていく。どこまで行くのかと不安になって引き返そうとも思ったが、もう帰り道も自信がなくなってきてたので、最後までついて行くことにした。後でわかったのだが、彼らは洞窟ツアーに来ている人たちで、私達ともう二人がツアーに関係なくついてきているという状態だったみたい。結局1時間半ほど彼らについていった。駐車場に戻ってからガイドさんにツアーとは知らずについてきたことを謝ってチップ渡そうとしたけれど、笑って受け取ってくれなかった。こういうことよくあるのかな。駐車場にはサインがあるだけで洞窟への入り口への道順も全くわからないので、個人で行く場合は注意が必要。

その他
星撮影ツアー
イースター島のモアイと星空、天の川

南天の星空とモアイの写真を撮りたく星撮影ツアーに参加した。モアイが復元されているところは夜間立ち入り禁止なので、許可をとっているツアーへの参加が必須になる。タハイ遺跡なら夜間も入れるのかもしれないが、町に近くて明るすぎて星撮影にはむかないと思う。 グリーンアイランドツアー という会社がツアーを催行している。2種類のツアーが有り、Rapa Nui Stargazing Experienceは夜8時頃出発してアフ・ナウナウとアナケナ海岸で星の撮影をして12時過ぎに戻るツアー。Stars to Sunriseは夜中の4時頃出発して、アフ・トンガリキで星を撮影して、そのまま朝日を見て帰るというツアー。私達が参加したのはStars to Sunriseのツアーだったが、この日は特別にラノ・ララクで星の撮影をして、アフ・トンガリキに行き朝日を見て帰るというコースだった。値は張るが一生に一度の経験ができてよかった。星が好きなら行く価値あり。

本来なら写真家の方が連れて行ってくれるはずなのに、ツアーガイドは星も写真も全く知らない人だった。南半球の星のこと、撮影スポットのこと、撮影時のモアイの照らし方などを教えてくれるかと期待していたけれど、その点は残念だった。参加者3人(+写真を撮らない同伴者2人)だったので、3人で相談しながらスポットを決めて撮影した。他の2人が天の川ばかり撮りたがってので、南半球でしか見れないマゼラン星雲などはあまり撮れなかった。

博物館

ハンガロアの北端、タハイのから内陸側に入ったところにある。サンゴで出来たモアイの眼、女性のモアイ、ロンゴロンゴの文字が書かれた木の板(ただし複製)が展示されている。そのほかに島の歴史、モアイの制作過程やどのようにモアイを運んだり立てたかの有力な説を説明したパネルがある。

レストラン

イースター島のレストランはシーフード料理がほとんど。お勧めはハンガロアの南側にあるハンガ・ピコという港の先にあるTataku Vaveというレストラン。レストランからの夕日も綺麗だし、サービスも良い。昼食は観光の合間で手軽に済ませたいときにはエンパナーダ屋(Empanadas Tía Berta)がお勧め。

レンタカー・運転

レンタカー会社が2軒ほどあるがネット予約が出来なかったので、タパティ・ラパヌイという祭の期間中で混む時期とうこともあり、前もって民泊の主人が紹介してくれた方から借りた。何回かレンタカー屋の前を通ったけれど、車は十分ありそうだった。慣れないマニュアル車で苦労したのでレンタカー屋で借りれば良かったと思った。

ハンガロアからアフ・トンガリキやラノ・ララクへ行く島の南岸の海沿いのドライブは本当に気持ちがいい。道には穴ぼこも多いし、牛が道にたくさん出てくるのでスピードは出せないけれど。

終わりに

インスタグラムで見た一枚の写真がきっかけで来ることにしたイースター島、本当に来てよかった。モアイと島の大自然は見ごたえがあった。

倒れたままのモアイがたくさんあるとは来るまで知らなかった。なぜ復元しないのだろうと初めは疑問に思ったけれど、何日か島に滞在してこのままでいいんだ思うようになった。島の人達はあるがままにしておきたいんだと思う。

フォトギャラリー

イースター島 1
イースター島 2

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最終更新日:2021年2月1日