ドロミテ地方の旅行記

はじめに
セチェーダ

ドロミテ地方はイタリアの北東部のオーストリアとの国境近くに広がる山岳地帯。荒々しい岩肌が剥き出しの切り立つ山々が連なる景観が特徴的。2009年には世界遺産に登録された。最高峰のマルモラーダ(Marmolada, 標高3,342m)をはじめ、3,000mを超える山がいくつも連なる。冬はスキー、夏は避暑とハイキングで多くの人が訪れる。

この地方に特徴的なマグネシウムを多く含む石灰岩は発見者の名前にちなんでドロマイトと呼ばれるようになり、この地方もドロミテ(Dolomiti:伊、Dolomite:英)と呼ばれるようになった。

ドロミテ地方は第一次世界大戦まではその大部分がオーストリア(オーストリア・ハンガリー帝国)の領土だったが、戦後戦勝国のイタリアの領土になった。第二次世界大戦の頃にはドイツ語が禁止され、イタリア系住民の移住を奨励されていた。第二次大戦後しばらくして民族意識の高まりも相まって自治州になった。地名の多くはイタリア語とドイツ語の2つがあるが、このサイトでは地名はイタリア語表記を中心にしている。

トロミテ地方の地図

ドロミテ観光の拠点としては東側のコルティナ・ダンペッツォと西側のオルティセイやセルヴァがあるヴァル・ガルデナが便利。コルティナ・ダンペッツォとヴァル・ガルデナは80kmほどの距離だが、いくつかの峠を超えなくてはならないので(地図の)車で一時間半ぐらいかかる。滞在期間を分けて2ヶ所に宿泊するのがおすすめ。私達は3日の日程で、コルティナ・ダンペッツォに2泊、オルティセイに1泊した。

7月に訪れた今回の旅行の目的はハイキング。ヨーロッパでのハイキングは初めてだったが、アメリカやパタゴニアでのハイキングとの違いの一つは山小屋が充実していること。トレイルの途中の山小屋で休憩したり食事をすることもできる。アメリカで泊りがけのハイキングはテント泊が多いが、こちらは山小屋に宿泊してのhut-to-hutのハイキングが可能。日本でも山小屋が充実しているのだろうか?

もう一つの違いは、スキーで人気な場所ということもありリフトやロープウェイを使って峠や山間の町からかなりの標高まで行けるということ。多くの場合森林限界を超える標高まで10分程度で到着するので、苦労することなく雄大な風景が楽しめる。

コルティナ・ダンペッツォ(Cortina D'Ampezzo):東側の拠点

コルティナ・ダンペッツォはドロミテ地方の東側の観光の中心地で、別荘やリゾート・ホテルが立ち並ぶ大きな高級リゾート地。1956年に冬季オリンピックが開催されたウィンター・スポーツのメッカ。2026年には再び冬季オリンピックが開催される予定。

コルティナ・ダンペッツォの西側にはトファーナ(Tofana)、東側にはモンテ・クリスッタロ(Monte Cristallo)とソラピス(Sorapis)の3千メートル級の山がそびえる。

ここからはトレ・チーメ・ディ・ラヴァレード(Tre Cime di Lavaredo、独:Dri Zinnen)、チンケ・トーリ(Cinque Torri)、ソラピス湖(Lago Sorapis)、ブライエス湖(Lago di Bràies)などのへの観光・ハイキングに便利。

トレ・チーメ・ディ・ラヴァレード(Tre Cime di Lavaredo, Dri Zinnen)

トレ・チーメは3つの頂きという意味で、名前の通り3つ尖った峰が並びドロミテ地方で最も有名な山の一つ。中央の一番高い峰が標高2999mのチーマ・グランデ(Cima Grande)、東側にチーマ・ピッコラ(Cima Piccola)と西側にチーマ・オヴェスト(Cima Ovest)を擁する。

トレ・チーメ

トレイルはアウロンツォ山小屋(Refugio Auronzo)から出てトレ・チーメの周りを一周するループになっている。反時計回りの方が景色が良いとのことで、ほとんどの人が反時計回り(トレ・チーメの南側から)に歩いていた。アウロンツォ山小屋から1kmは平坦なトレイルで途中に小さなチャペルがある。この後トレイルは少しづて登り始めるがラヴァレード山小屋を超えると勾配も急になる。出発点から2.5kmのあたりがラヴァレード峠。ここは東西方向に並んだ3つの峰の直線上のあたりなので、峰々が重なって見える(はず)。私達が訪れた日はアウロンツォ山小屋を出る時は小雨が降っていて霧のため視界は悪く山は全く見えない状態だった。雨こそ途中で上がったけれど、ラヴァレード峠までは霧が深く、ほとんど何も見えない状況が続いた。

峠からしばらく下って次の坂をの登り切るとロカッテリ山小屋(Refugio Locatelli)に着く。出発点から4.5kmぐらいでちょうどトレイルの中間地点にあたる。ロカッテリ山小屋に着くころから少しづつ霧が晴れてきて、雲の合間にトレ・チーメの一部が見えてきた。山小屋のカフェでコヒーと林檎パイ(apfel strudel)を食べながら雲が晴れるのを待つ。ここから見るトレ・チーメは良く写真で見るアングルでおそらく一番格好良く見える所。トレ・チーメの全貌は見ることはできなかったけれど、一部だけでも見れたので良かった。山小屋の奥には2つの小さな池があり、そちらへの短いトレイルも楽しめる。

ロカッテリ山小屋を出るとトレイルはトレ・チーメの方向に向かい1.5kmほど一気に下る。さらに1km弱ほどの坂を登るとトレイルはフラットになる。雲に隠れたり晴れたりするトレ・チーメを左側に見ながら歩くとランガルム山小屋(Langalm)に着く。近くには小さな池もあり、トレ・チーメが映り込む景色も楽しめる。ここからは先は比較的平らなトレイルを2.5kmほど歩くとアウロンツォ山小屋に到着。山小屋に着く頃には再び雲と霧で周りの山は全く見えなくなっていた。

距離:10.1km、累積標高:494m

トレ・チーメ・ディ・ラヴァレードへの行き方

コルティナ・ダンペッツォからトレ・チーメのトレイル・ヘッドがあるアウロンツォ山小屋までは距離にして約20km、車で30−40分のほど距離。途中にミズーリナ湖があるので散策してもいい。ミ゙ズリナ湖の先は有料道路になっていて、通行料は乗用車で30ユーロ(2023年時)。

車で行く場合には、駐車場が満車になってしまう可能性があるので注意が必要。特に観光客が多い7・8月の週末は注意が必要。ネットの情報によると遅くとも9時に着くようにとアドバイスしている人が多かった。私達が訪れた日は7月の週末だったけれど、朝から小雨が降っていたので問題なかった。ホテルでゆっくり朝食をとった後に出て、9時すぎに着いた時点ではまだ空車の方が多いぐらいだった。

コルティナ・ダンペッツォからはバスでも行ける。早いのはトレ・クロチ峠(Passo Tre Croti)を通ってミズリナ湖で乗り換える便(30番, 31番)で1時間程かかる。やや遠回りのドッビャーコ(Dobbiaco)を経由する便(445番,444番)は1時間半強かかる。

カルディニ・ディ・ミズリナ(Cardini Di Misurina)のハイキング

最近インスタの影響で人気が出てきているのカルディニ・ディ・ミズリナへのハイキング。アウロンツォ山小屋が出発点で、距離は3kmほどと短いので、トレ・チーメのハイキングと同じ日に行くことも可能。

私達は霧が深かったので断念した。EarthTrekkersというサイトが英語だけれど参考になる。

距離:3.2km、累積標高:210m

チンクェ・トーリ(Cinque Torri)
チンクェ・トーリ

チンクェ・トーリは5つの塔という意味。5つの奇抜な形の岩が並んでいて、その周囲を回るハイキング。リフトでスコイアトーリ山小屋(Rifugio Scoiattoli)まで登ると5つの岩が見渡せる。2km弱、45分程度のハイキング。ロック・クライミングで有名なようで、たくさんのクライマーが登っていた。 第一次大戦のときに使われた塹壕などが残されている。

時間に余裕があればスコイアトリ山小屋からアヴェラウ山小屋(Rifugio Averau)やヌヴォラウ山小屋(Rifugio Nuvolau)へのハイキングを追加することもできる。そちらは4kmほどのハイキング。

帰りのリフトの最終時間を確認しておこう。

チンクェ・トーリのハイキング、距離:1.9km、累積標高:130m

アヴェラウ山小屋とヌヴォラウ山小屋へのハイキング、距離:4km、累積標高:230m

ヴァル・ガルデナ(Val Gardena)、オルティセイ(Ortisei, 独:Sankt Ulrich):西側の拠点

ヴァル・ガルデナ(ガルデナ谷)はドロミテの西側の観光で拠点に便利な地域。東にセッラ山群、北にプエツ・オドレ山群(Gruppo Puez Odle、独:Puez-Geisler)、南にサッソルンゴ(Sassolungo、独:Langkofel)とアルペ・ディ・シウジに囲まれた地域で、オルティセイ、サンタ・クリスティーナ(Santa Cristina)、セルヴァ・ディ・ヴァル・ガルデナ(Selva di Val Gardena)という小さな町が並ぶ。コルティナ・ダンペッツォに比べると気取らなく庶民的な雰囲気がいい。

セッラ山群(Gruppo del Sella)
セッラ山群

ヴァル・ガルデナの東側位置する大きな山塊で、最高峰のピズ・ボエ(Piz Boè)は3152mの標高。セッラとはイタリア語で鞍という意味で鞍という意味で、台地状の形をした山塊。ポルドイ峠(Passo Pordoi)からロープウェイでセッラ山群の上にあるポルドイ展望所(Sasso Pordoi)まで一気に登ることができる。台地状な地形なので高低差もあまりなく散策ができ、セッラ山群の最高峰のピズ・ボエや南にはマルモラーダ、西にはサッソルンゴが一望できる。

ポルドイ展望所からピズ・ボエの頂上までは往復で6.6km、累積標高415mほどのトレイルがある。私達は時間がなかったので歩かなかったけれど、7月の初旬でも標高が高いので雪が少し残っていた。

セッラ山群

一枚目の写真はポルドイ峠から見上げたセッラ山群。二枚目はセッラから見るサッソルンゴ。

セチェーダ(Seceda)

セチェーダ山は今回のドロミテ旅行で一番行きたかった所。切り立った北側斜面と南側のなだらかな斜面の緑の牧草地の対比があまりにも美しい。その奥にはプエツ・オドレ山群の山が連なる。

オルティセイの町からケーブルカーを二本乗り継いで降り立ったロープウェイの駅を出たらこの景色が広がる。10分ほど坂を登ると山の頂上で、そこからセチェーダの尾根方向に少し下った所からの眺めが最高。もし時間がないなら、ここまで歩くだけで十分な景色が楽しめる。

セチェーダ高原は斜面を利用した牧草地になっていて、小さな小屋が点在していて絵になる。プエツ・オドレ山群はもちろん、セッラ山群、サッソルンゴの山々とが見渡せ、360度の絶景が広がる。何回もパノラマ写真を撮りたくなる。

セチェーダ高原を回るハイキングはセチェーダの尾根を左に見ながら進み、高原を下ってフィレンツェ小屋(Regugio Firenze)に着く。そこからは結構急な坂を歩いてセチェーダのロープウェイの駅まで戻ってくるトレイル。

時間があまりなかったのでこのハイキングをするかそのまま降りてアルペ・ディ・シウジ高原にロープウェイで行くか迷った。景色の点ではロープウェイの駅の付近が一番良いので、アルペ・ディ・シウジ高原に行くのが良かったのかも知れない。

距離:10.0km、累積標高:568m

アルペ・ディ・シウジ高原(Alpe di Siusi、独:Seiser Alm)

アルペ・ディ・シウジはオルティセイのすぐ南側に広がる高原でヨーロッパで最大の牧草地。牧草地のなかにキャビンや山小屋が点在している。比較的平らなハイキングコースを楽しむことができる。時間がなく行けなかったが、牧草地ののどかな光景と険しいサッソルンゴの対比的な光景は今度是非訪れたい。

セルヴァからプエツ山群のトレイル

セルヴァの町からロープウェイで北側のプエツ・オドレ山群のダンテルセピスまで登り、そこから往復2kmほどのトレイルをジミー山小屋(Rifugio Jimmi)までのトレイルを歩いた。ガルデナ峠(Passo Gardena)越しに壮大なセッラ山群が目の前にそびえる。

サンタ・マッダレーナ村(Santa Maddalena)

サンタ・マッダレーナ村はヴァル・ガルデナから山を挟んだ北側のヴァル・フネス(Val Funes、フネス谷)にある小さな村。村はプエツ・オドレ山群の西側の麓にあり、間近にギザギザしたプエツ・オドレの峰々がそびえ立つ。サンタ・マッダレーナ教会と背景にそびえ立つプエツ・オドレ山群は絶景。

サンタ・マッダレーナ教会が有名だけれど、この村にあるもう一つの教会サン・ジョヴァンニ教会(San Giovanni)も見どころの一つ。玉ねぎ形の屋根が特徴の教会だ。夏の間は牧草地として使われているため周りに塀があり近づけないけれど、塀越しにプエツ・オドレ山群を背景にした教会が見ることができる。

ヴァル・フネスでのハイキングとしてはアドルフ・ムンケル・トレイルが有名。雄大なプエツ・オドレ山群を眺めながらのハイキングが楽しめるらしい。

ヴァル・ガルデナから直線距離では近いが、だいぶ回り道をするので車で45分ほどの距離。

最後に

今回初めてのドロミテ旅行は3泊4日と早歩きだったので行きたいところの半分も行けなかった。リフトやロープウェイを使って時間短縮ができるので、日数の割にはたくさんの雄大な風景が楽し無事ができた。

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最終更新日:2023年11月12日